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【皐月賞回顧】“想定外”の逃げでも揺るがぬ集中力 ロブチェンが示した賢さと完成度の高さ

2026/04/20 10:15
勝木淳
2026年皐月賞、レース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

共同通信杯3着という伏線

牡馬クラシック初戦の皐月賞はロブチェンが制し、GⅠ2勝目。2着リアライズシリウス、3着ライヒスアドラーで決着した。

年々、皐月賞の難易度が増してきた。有力馬が直接対決する機会が少なく、戦力比較が困難な年が増えた。加えて今年は主役不在の下馬評通り、すっきりとした図式にならなかった。

それもそのはずで無敗馬がいない皐月賞は13年ぶり。裏を返せば13年も無敗馬がいたことにも驚く。勝っては負け、負けては勝ちを繰り返して迎えた皐月賞はホープフルSを制したロブチェンの勝利で幕を閉じた。

思えば、もしこの馬が共同通信杯をあっさり突破していれば、文句なしの一本かぶりだっただろう。ホープフルS組か朝日杯FS組か、それとも京成杯か。予想の軸をどこに置くのか決められない一戦だったのは、ロブチェンの共同通信杯3着が与えた影響が大きい。

だが、あの共同通信杯の敗戦は皐月賞のへの布石であり、大いに収穫があった一戦だったといえる。我々の頭を悩ませはしたものの、陣営は手ごたえを深めていた。これも観る側と送り出す側の視点の違いだろう。

ロブチェンは共同通信杯でロケットスタートを切った。その速すぎるスタートからあえて下げる形をとり、馬は戸惑う仕草をみせた。なぜ先頭を走っているのに後ろに行くのか。闘争心の塊のようなサラブレッドは引くのを嫌がる。ある意味で自然なリアクションだった。

この挙動を松山弘平騎手は皐月賞に活かした。スタートは五分でいい。その後は間違いなく行き足をつけてポジションがとれる。内枠を引いたことで描いた作戦があったはずだ。

ただ、逃げるのは想定外。ほかに速い馬がいなかったことと、リアライズシリウスが外枠に入ったことで結果的に逃げる形になったが、ロブチェン自身は一切、ストレスも消耗もなかった。普通に走っていた1コーナーで先頭にいた。ただそれだけだった。


ワールドプレミアの意地

とはいえ、いきなり実戦でハナに立つと、戸惑ってしまう馬もいる。精神的にフワフワすれば、そこにスキが生まれ、ライバルたちにつけ入られる。クラシックは厳しい。だが、ロブチェンに戸惑いはなかった。先頭でも集中力を維持したまま、松山弘平騎手のコントロールを受け入れていく。その賢さと完成度の高さに恐れ入る。

1000m通過は58.9。9Rで行われた同コースの牝馬限定2勝クラス・野島崎特別が59.4であることを踏まえると、決して速くない。あくまで自然な形で刻んだラップだった。後半1200mは11.7-11.6-11.8-11.4-11.1-11.7。一定のリズムからラスト600~200m11.4-11.1。4コーナーをこのラップで楽々回られては後ろはなす術がなかった。

ロブチェンと番手につけた2着リアライズシリウスがストレスなく走れた競馬だった。直線の攻防ではロブチェンは松山騎手のステッキに鋭く反応して前に出た。競馬への集中力、勝利への執念が深い。

ロブチェンの父ワールドプレミアは今年も種付け料50万円とクラシックウイナーとしては格安にもかかわらず、ロブチェンが出た初年度の血統登録数は25頭しかいない。たった25頭からクラシックウイナーを出したのは控えめに言って驚異といえる。繋養先の優駿スタリオンステーションは電話が鳴りやまないのではないか。

父ディープインパクト、主なタイトルは菊花賞と天皇賞(春)。現代競馬ではスピード不足と受けとられる戦歴だが、なんのその。皐月賞を1:56.5で逃げ切る馬が出た。

確かに重厚な血統背景の持ち主ではあるが、母馬との相性次第で軽さを伝える。母の母はカナダのオールウェザー8.5ハロンの重賞などを勝っており、そこに米国産で欧州の芝GⅠ6勝、引退レースのブリーダーズCクラシック2着のジャイアンツコーズウェイを配した血統。ワールドプレミアの総合力を引き出した。

共同通信杯で東京を経験したことも陣営の収穫のひとつ。どんな競馬もできる自在性と安定したスタートを考えると、万全なら二冠をかっさらっても不思議ではない。


5着フォルテアンジェロの可能性

2着リアライズシリウスは悔しい敗戦となった。外枠から先行して、ロブチェンの背後をとるのは完璧な運びだった。ハナを叩きにいってしまえば、おそらくリアライズシリウス自身がエキサイトしていただろう。

ギリギリの攻防でとれた最高の形であり、後ろのライバルたちに急かされることもなかった。4コーナーではロブチェンをとらえるだけ。それも前走で負かした相手とあっては勝利がチラついてもおかしくない。これは相手が悪かったとしかいえない。母の母ダンスーズデトワールはアルゼンチン共和国杯勝ち馬ルルーシュを出すなど距離適性の幅は広い。

3着ライヒスアドラーは佐々木大輔騎手が付きっ切りで調教し、手の内に入れたことが大きかった。中団より後ろにチャンスが回ってこない展開のなかでもよく差を詰めてきた。中団でもがいたライバルたちよりは着順通り一歩前に出た。東京に替わって上がり目も期待できる内容だった。

惜しかったのは5着フォルテアンジェロだろう。ホープフルS2着の実績を考えても、上位入線馬とは互角の実力がある。皐月賞も上がり最速33.4でラスト猛然と追い込んできた。 やはりスタートで後手を踏んだのがすべて。想定外の競馬で一定の結果を残せたのは能力の裏づけであり、ゲートさえ修正できれば、次は変わってきそうだ。

皐月賞組の惑星馬はこの馬ではないか。欧州スピード血脈にフィエールマン。高速決着の2400mはむしろ歓迎だろう。


2026年皐月賞、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。

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