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【アンタレスS回顧】ムルソーが1馬身半差勝ちで示した能力の高さ 先行圧勝劇に垣間見た牝系のスピード

2026/04/20 10:40
勝木淳
2026年アンタレスS、レース結果,ⒸSPAIA

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勝利のカギは序盤の攻防

ダート重賞アンタレスステークスはムルソーが後続を完封し、重賞初制覇。2着モックモック、3着ハグで決着した。

いちばん小さい馬で12kg増の482kgだったサイモンザナドゥ。500kg以上が9頭も集まったド迫力の肉弾戦は、ムルソーが結果的に逃げ切る形で幕を閉じた。

3歳秋からレース間隔をとり、無理な使い方をしてこなかったことが成長につながった。連戦を厭わないダートの猛者とはイメージは異なるものの、じっくり育てる方針がムルソーには合っていた。

4歳シーズン3戦はオープン特別で4着、1着、1着と結果を残し、着実に重賞で戦える力をつけた。今年は仁川S(L)2着からここへ。陣営が描いた通りに結果を残せるのは、ムルソーの高い能力があってこそだ。

アンタレスSも、そんな性能の高さを随所で発揮していた。まずは序盤の攻防だ。好発を切ったモックモックをけん制しつつ、外からハナをうかがうハグに対しても譲らない構えで対応した。

自然な形で応じられたことで、1~2コーナーではシンプルに内外の差を使ってハナを確保できた。この序盤の攻防を見ていたモックモックやサンデーファンデーらは厳しい流れに巻き込まれまいと引いていき、向正面では物理的なリードをとることに成功した。これが序盤、レースの入りを思惑通りにできた証ではないか。

結果的に、中盤までにとった貯金をじわじわと使うことで、直線まで仕掛けを急かさずにすんだ。抜群の手応えで最後の直線に向いたのも、序盤の攻防があってこそ。レースの入りの大切さを端的にあらわす競馬だった。


50年以上繁栄する牝系

これほどまでに落ち着いたレースができたのも、ムルソーの能力が高いからこそ。余裕をつくりながら重賞で1馬身半差の完勝となると、夢は広がる。ダート戦線の最上位は世界レベル。道のりは長いかもしれないが、確実にステージがひとつ上にあがった。陣営はそんな手応えを感じたのではないか。

ムルソーの牝系は、アメリカから輸入されたギヤラントグロウを基礎に50年以上日本で繁栄してきた。同馬の娘ホクトヒシヨウが重賞5勝馬ホクトヘリオス、桜花賞2着ホクトビーナスを出し、ホクトビーナスから報知杯4歳牝馬特別(現フィリーズレビュー)2着ホクトペンダントにつないだ。

ホクトペンダントはビーナスラインの母で、ホクトペンダントの孫にあたるのが、ムルソーの祖母ユメノオーラ。こちらもフィリーズレビュー2着がある。牝系のスピードの血に母の父エンパイアメーカーが入り、ムルソーに至った。先行圧勝も納得の血脈だ。そのうちこの牝系から芝の活躍馬が出る予感もあり、その際は先物買いしたいものだ。


武豊騎手と手が合うモックモック

2着は好位から抜け出したモックモック。ムルソーが完璧なレース運びをした分、差し馬勢に出番が回ってこなかったという面はあるものの、スタートを決めて好位から進められたのは収穫だった。

3走前に武豊騎手とのコンビで3勝目をあげたレース振りなどを踏まえると、騎手と手が合う印象もある。この牝系はどちらかというと地方の中距離より少し短い距離で成績を上げる馬が多いが、中央のダートだと1800mで先行するぐらいがちょうど良さそうだ。

父は個性豊かなMacho Unoの血を引くダノンレジェンド。JRA通算のコース別成績で20走以上に限定すると、阪神ダート1800mの勝率が第1位で19.4%もある。回収率も単勝204%、複勝124%と高く、該当馬を発見したら飛びつきたい。今回このデータに気づけなかったのは痛恨だった。

3着は接戦になったが、ハグが粘った。不来方賞とジャパンダートクラシックでナルカミに連敗してから精彩を欠いていたが、10kg絞ったことでスタートから動けるようになり、積極的なレースを展開できた。

父は米国三冠馬ジャスティファイ。スピードを発揮して粘る形がベストだろう。安定して先行できるかどうか。今後に注目しよう。


2026年アンタレスS、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。

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