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【目黒記念回顧】ファイアンクランツが重賞初制覇 上位独占で示した4歳世代の層の厚さ

2026/06/01 10:35
勝木淳
2026年目黒記念、レース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

カギを握ったロングスパートへの適応力

ダービーデーを締めくくる目黒記念はファイアンクランツが制し、重賞初制覇。2着ウィクトルウェルス、3着ダノンシーマで決着した。

ダービーの余韻が東京競馬場に残るなか、パドック周回から本馬場入場と淡々と進んでいくのは例年と同じ。目黒記念はダービーという祝祭空間の裏で一発逆転を虎視眈々と狙う者たちのための救済レースでもある。その結果が3番人気、1番人気、2番人気と比較的順当に収まったのは救いとなったのだろうか。

ダービーはスローペースだったが、目黒記念もほぼ毎年似たような遅い流れになる。さすがに古馬同士の芝2500mとなると、よほど飛ばす馬が出走しないとペースは上がらない。

今年は大外枠のキングスコールがハナへ。前走は控える競馬で3勝クラスを突破したが、今回は相手関係や並びを考えてのことか主導権をとりにいった。もちろん、ペースは速くない。1、2コーナーで13.1と緩み、向正面も12.6-12.2-12.2。1000m通過は推定1:02.1と遅い。

ダービーではリアライズシリウスやバステールがそれを嫌ったが、目黒記念は逃げたキングスコールが早めにギアチェンジして引き離しにかかり、残り1000mは11.8-11.4-11.2-11.2-11.6。ダービーと同じく1000m勝負に持ち込んだことで、極端な上がりの競馬にならなかった。

上位に来た馬たちは4コーナーで順位を上げており、優位なポジションから末脚比べに持ち込めないと、上位進出は叶わなかった。切れるというより、ロングスパートへの適応力が明暗を分けた競馬だった。


適性を引き出した陣営の手腕

勝ったファイアンクランツは上位着順馬たちのなかで、もっとも前にいた。直線では進路を失いかけたところ、内へ活路を見出し、抜け出した。

2年前の札幌で新馬を勝って以来、勝利は久々となったが、この間も札幌2歳ステークス3着、青葉賞2着、そして昨年のダービーは9着。ダイヤモンドS2着という成績からもスタミナ型で、ロングスパートを得意とする。

セントライト記念ではゲートで暴れ、リズムを乱しかけたが、堀宣行厩舎はそういったケアに関しては抜かりない。きっちり立て直し、ファイアンクランツが気分よく適性を発揮できる舞台を選び、重賞に手が届いた。

母カラフルブラッサムといえば、フェブラリーSを連覇したコスタノヴァがいるが、ダートの末脚もまた持続力の強さ。同じキングカメハメハ系でもこちらはドゥラメンテが長距離適性を伝えている。

この一族はキングカメハメハ系と相性がよく、父ルーラーシップからは5勝をあげたリレーションシップ、キングカメハメハとの間にはJRA1勝カラレーションが出た。万能型で持続力勝負に強い血が母の父ハーツクライの末脚力と結びつく。秋の東京で大舞台が待っている。


層が厚い4歳世代

2着ウィクトルウェルスはファイアンクランツについていく形で上がっていき、直線はダービーでも伸びた外に回った。勝ち馬には上がり600mで0.1秒上回るも、及ばなかった。外を選んだことがロスになったとは思えず、ファイアンクランツの進路取りにやられた印象がある。

デビューから3着をはずしたことがなく、能力は文句なし。今回は勝ち運に恵まれなかった。ダービーのパントルナイーフと同じくC.ルメール騎手の戦略は完璧といっていい。それでも勝てないから競馬は難しい。

3着ダノンシーマも2着とはハナ差で、上位との差はほぼないに等しい。こちらは上位2頭のさらに後ろからレースを進め、末脚はメンバー中最速と、ポジションが明暗をわけた。

阪神大賞典は距離が長く、ベストは2000~2400m。末脚を温存し、最後に爆発させる競馬が板についてきており、形はできつつある。トップハンデだったことを踏まえても、次につながる走りだった。

結果的に、上位6頭を4歳馬が占めた。クロワデュノール、マスカレードボール、ミュージアムマイルとGⅠ級の層が厚い世代だが、その下も布陣は強力で、夏競馬でも目を離せない。そんな予感がする。


2026年目黒記念、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 世界への挑戦』(ガイドワークス)に寄稿。

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