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【葵S回顧】デアヴェローチェが示した父マテラスカイの可能性 広がる“二刀流”の期待

2026/06/01 11:00
勝木淳
2026年葵S、レース結果,ⒸSPAIA

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並びが読みにくい短距離重賞

唯一の3歳限定スプリント重賞・葵ステークスはデアヴェローチェが勝ち、重賞初制覇。2着ヒシアイラ、3着タマモイカロスで決着した。

ダービー前日の京都で行われたのは、ダービーの半分の距離で争われる葵S。3歳世代にとってダービーは最大にして最高点ではあるが、その反面、多様な個性の受け皿も必要で、芝の短距離は葵Sが担う。

ダートは三冠、マイルはNHKマイルカップがあるので、3歳限定のスプリントGⅠも欲しいところだが、現状では番組が詰まっており、なかなか難しい。色々と目まぐるしく改革されていく夏競馬にそんなGⅠレースがつくられてもいい。

原則6月から「3歳以上」に番組編成が変わるので、それを崩せないかもしれないが、これまでの常識をとっぱらうほどの改革を行うなら、崩してもよさそうだ。スプリント血統が我慢してマイルを走るのは、個性を伸ばすことと逆行してしまう。

葵Sは3歳スプリンターにとって最初の大きな目標だけに、毎年ほぼ必ず混戦になる。この路線は大目標がない分、買う側にとっても力関係、適性どちらもはっきりしていない。単純な展開読みすら難しく、今年も逃げ候補が複数おり、さらにどの馬がいちばん速いかすら判然としていなかった。

スタート直後はトップアタック、エイシンディード、ウチュウノセカイが横並びで進み、前走逃げたアンジュプロミス、メランコリニスタ、ヒシアイラらは絡んでいかなかった。

言うならば先陣争いは予想外に激しくなく、前半600mは33.7。このレースでは中京開催の21、22年も含めて「33.2」が直近だけでも3回記録されており、今年はハイペースというほどではない。とにかくこの春の京都は時計が速く、33.7は決して無理なラップではない。


二刀流を目指せる祖母アイランドファッションの血

勝ったデアヴェローチェは結果的に枠順にも恵まれ、混戦の先行3頭の背後のインをとれた。まずはこれが最大の勝因だろう。体力を消耗しない流れで好位のインとなれば、着実に脚は残せる。

最後は進路の確保だけ。4コーナー出口で上手くコーナーリングを利用して、ウチュウノセカイの外へ出てきた。今回もスタートは若干怪しかったが、ほかは問題なく、レース巧者ぶりを発揮した。センスを感じさせる競馬だった。

父マテラスカイはデアヴェローチェと同じ勝負服で活躍し、現役時代36戦7勝。ダートの短距離路線を走り、重賞はプロキオンS、クラスターCの2勝。BCスプリント、ドバイゴールデンシャヒーンなど海外GⅠでも善戦した。

この世代は初年度産駒で、5月24日までの時点で芝3勝に対し、ダートで9勝。距離では1200mが9勝で、現状はマテラスカイに似た適性の持ち主が多い。デアヴェローチェはダート未経験だが、将来的にこなす可能性もある。

マテラスカイ産駒のJRA重賞はこの勝利が初。ダート短距離重賞がないせいもあるが、デアヴェローチェの芝適性は母ミニーアイルの流れでもある。母があげた2勝はどちらも小倉芝1200mであり、上にはサトノソルタスなど中距離型も目立つ。距離が短距離寄りに出たのはやはり父マテラスカイの影響だろう。

さらに遡ると、ミニーアイルの母アイランドファッションは米国ダート10ハロンGⅠのアラバマSや同7ハロンのラブレアS、サンタモニカハンデを勝ち、芝のGⅠでもそこそこ結果を残した。ツルマルボーイが勝った2004年の安田記念にも出走している。

このように、芝ダート二刀流の血がデアヴェローチェに流れていると思うと、可能性は広がる。マテラスカイが歩んだダート短距離の道もこなせるのではないか。


収穫あったヒシアイラの2着

2着ヒシアイラは惜しくも差し届かなかったが、この先に展望が広がる内容だった。デビュー2戦目のひいらぎ賞から3戦連続で先手を奪い、5着、1着、2着。明らかに短距離にシフトして適性がハマった。

加えて、ここで控える競馬を試みて2着に入ったのは大きく、脚質の幅が広がった。距離適性を狭め、位置取りの自在性が出てくるのはこの先の出世への大きな一歩となるだろう。

母ジングルベルロックはデゼルやオヌールを出したアヴニールセルタンの妹。アヴニールセルタンは上記2頭だけを残して早世しており、ジングルベルロックにはフランス二冠牝馬の血を日本で根づかせる役目を担う。

3着はヒシアイラのさらに後ろから追い込んだタマモイカロス。こちらはファルコンS6着から巻き返し、やはり1200m適性の高さを証明した。まだ前半で流れに乗れない面があり、他力本願だが、ここが解消されれば、勝負圏内に食い込んでくるだろう。


2026年葵S、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 世界への挑戦』(ガイドワークス)に寄稿。

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