【安田記念】単勝1.3倍グラスワンダーを撃破 エアジハードが制した1999年の“黄金世代”対決をプレイバック

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前哨戦のリベンジに燃えるエアジハード
今週は安田記念が開催される。過去にはジャスタウェイやロードカナロア、ウオッカらが制した春のマイル王決定戦。今回はそんな中から1999年の一戦をピックアップして当時のレースを振り返っていく。
この年は1番人気のグラスワンダーが単勝1.3倍、2番人気のキングヘイローが6.0倍、以降は2桁オッズと上位2頭が抜け出る構図に。スペシャルウィーク、エルコンドルパサーらを輩出した“黄金世代”の有力馬同士による対決でもあり、多くのファンの注目を集めていた。ただ、他にもシーキングザパールやキョウエイマーチなど複数GⅠ馬も参戦する豪華な顔ぶれだった。
そんななか、4番人気の支持を集めていたのがグラスワンダーらと同世代のエアジハード。前年のNHKマイルCではエルコンドルパサーに完敗を喫し8着に敗れたが、その後は3連勝で富士Sを制するなど力をつけていた。
ただ、前哨戦となる京王杯SCでは2着に好走しているものの、敗れた相手はグラスワンダー。有馬記念制覇からの始動戦を快勝した同馬の勝利を、多くのファンは疑わなかった。
先行策から一転、末脚生かす競馬で戴冠
ゲートが開く。キョウエイマーチがやや出遅れるが、すぐに立て直す。ハナを奪ったのはアグネスワールド。その後をホーリーグレイルらが追う。外からは2番人気のキングヘイローが鞍上に促されて位置を上げる。
グラスワンダーは中団にポジションを取り、エアジハードはその後ろに構えた。最後方のツクバシンフォニーまで馬群はひとかたまりとなり、レースは進む。
3、4コーナーでは外から進出したエガオヲミセテが先頭に並びかける。
だが、アグネスワールドは前を譲らない。2番手にいたキングヘイローもこれに続き、淀みないペースで流れる。
合わせるように、中団以降に構えていた上位人気2頭も動く。グラスワンダーが前に取りつこうと位置を上げると、その外からはエアジハードも進出する。スタンドの視線はグラスワンダーへと集まっていた。各馬の思惑を乗せたまま、レースはいよいよ最後の直線へ。
エアジハードは大外を回った分だけでやや後れを取る。一方、先に抜け出したのはグラスワンダー。力強い走りで粘る先行勢をのみ込み、残り400mを過ぎたところで堂々と先頭へ躍り出る。
追いかけるエアジハードは少しヨレるところを見せはしたが、ワンテンポ遅れて再び加速。抜け出したグラスワンダーを目標に猛然と追い込む。
グラスワンダーの独走かと思われたレースは、いつしか2頭のマッチレースに。グラスワンダーか、エアジハードか。
グラスワンダーがわずかに優勢かと思われたゴール前、エアジハードがもうひと伸びする。だがグラスワンダーも譲らない。
──エアジハードが、ハナ差先着した。
3着シーキングザパールに2馬身半差をつけ、同期2頭がワンツーを決めた。
グラスワンダー敗れる。そのどよめきとともに、エアジハードを讃える歓声が巻き起こった。
エアジハードの上がり3Fはメンバー最速。先行策でグラスワンダーに挑んで敗れた前走・京王杯SCから一転、末脚を生かす競馬で戴冠を果たした。
近年、つながりの薄い京王杯SCから主役が現れるか
エアジハードは同年の天皇賞(秋)で3着に好走すると、続くマイルCSを単勝2.2倍1番人気の大本命で迎える。キングヘイローやブラックホークら強敵を撃破し、春秋マイルGⅠを制覇。1999年のJRA賞最優秀短距離馬に選出されたのはもちろん、最優秀父内国産馬にも選出された。
種牡馬としては2010年に産駒のショウワモダンが安田記念を勝利。他にもアグネスラズベリやゼンノグッドウッドなど、多くの愛される馬を送り出した。
一方のグラスワンダーは、安田記念の敗北から復活。同年の宝塚記念と有馬記念を制すると、JRA賞特別賞に輝いた。
種牡馬としてはアーネストリー、セイウンワンダーといったGⅠ馬を輩出。さらに産駒のスクリーンヒーローが名マイラー・モーリスを送り出し、父系は現在まで受け継がれている。この血統のファンも多く、今なお愛される一族となっている。
エアジハードは今、新ひだかのBlue A Farmで余生を送っている。同期の名馬たちが次々と天に召されるなか、GⅠ勝ち馬として長く健在だったのが、奇しくもグラスワンダーとエアジハードだった。しかし、そのグラスワンダーも昨年8月にこの世を去っている。エアジハードには1日でも長く、幸せな日々を過ごして欲しい。
今年の安田記念は京王杯SCから1着ワールズエンド、2着セフィロが参戦予定。同レースを連対して本番に臨む馬は、2012年のストロングリターン以降勝ち星がなく、近年は本番とのつながりが弱まっている。果たして、この2頭はエアジハードのように主役の座をつかめるだろうか。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、タイキシャトル、スペシャルウィーク、ドウデュース。
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