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競馬の「ノンランナー」とは 英国ダービーで起きた馬券返還、JRA「導入の是非検討したい」

2026/06/17 18:51
SPAIA編集部
1番人気ベンヴェヌートチェッリーニがレース後に出走取り消しとなった英国ダービー,Ⓒゲッティイメージズ

Ⓒゲッティイメージズ

1番人気の馬券が返還されたノンランナーとは何か

2026年6月6日の英ダービーで、1番人気の馬が10着で入線しながら、関わる馬券がすべて返還される出来事が起きた。返還は「ノンランナー」という制度に基づいて行われた。海外競走の馬券を売るJRAにとっても関わりの深い仕組みであるが、聞き慣れない言葉の中身と、日本の制度との違いを整理する。

ノンランナーとは、出走を予定していた馬について、裁決委員(レースの公正さを判定する審判役)の判断で「競走に参加していないものとみなす」扱いを指す。レースそのものは成立させたまま、対象となった馬の馬券だけを返還する点に特徴がある。発走前に取りやめる場合だけでなく、いったんレースが行われて馬がゴールまで走り切った後でも、公正なスタートを切れなかったと判断されればノンランナーとして扱われる場合がある。

日本の中央競馬を運営するJRAにも、出走を取りやめる仕組みは備わっている。ただし手続きは、取りやめるタイミングと場所によって二つに分かれる。一つは出走取消で、出馬投票の締め切り後から、馬が装鞍所(そうあんじょ=レース直前に鞍を装着する場所)に入る前までに、疾病などの理由で出走を取りやめることをいう。もう一つは競走除外で、馬が装鞍所に入った後から発走までの間に、故障やゲート内での暴れなどが起きた際、裁決委員の判断で出走を取りやめさせることを指す。

出走取消と競走除外のどちらであっても、対象となった馬に関わる馬券は返還される。一方で、いずれも発走より前の段階で決まる点が、ノンランナーとの大きな違いになる。日本には、レースがスタートして馬がゴールした後に、公正なスタートを切れなかったことを理由として後から出走を取り消し、馬券を返す仕組みは存在しない。

ノンランナーとなる条件と馬券の扱い

後から出走を取り消す判断につながるのは、馬自身の挙動による出遅れではなく、馬の力では避けられない外からの要因によって、ほかの馬と同じ条件でスタートする機会が奪われた場合とされる。発馬機の不具合や、ゲート内で体の一部が挟まるといったトラブルがあてはまる。加えて、トラブルが勝つ見込みに大きく影響したと裁決委員が認めたとき、入線後であってもノンランナーとして確定する流れになる。

ノンランナーと確定すると、対象となった馬の馬券はすべて返還される。馬が実際にコースを走り、下位でゴールしていても扱いは変わらない。レース自体は成立し、残った馬による着順で配当が計算される一方、取り消された馬の馬券だけが買い戻される形になる。

なお英国では、勝ち馬などの払い戻しから一定額を差し引く措置がとられることがある。あらかじめ決まった配当で賭けるブックメーカー特有の仕組みであり、購入額を出し合った総額から配当を計算するJRAの方式とは異なる。日本の馬券では、ノンランナーとなった馬の分を返すだけで、払い戻しからの一律の差し引きが購入者に生じることはない。

後から出走を取り消す扱いは、各国の競馬主催者が共有する国際的な取り決めに沿ったものだ。「競馬と生産及び賭事に関する国際協約」、通称パリ協約に、公正なスタートを阻まれた馬を救済するルールが定められている。入線後の事後的な取消まで含めて導入しているのは、英国や香港、オーストラリアなどとされる。

2026年英ダービーとJRAの今後

2026年6月6日、英国のエプソム競馬場で行われた芝約2,410メートルのG1・英ダービーで、後からの取消が実際に適用された。1番人気に支持されたのは、父フランケル、エイダン・オブライエン厩舎のベンヴェヌートチェッリーニ(牡3歳)で、騎乗したのはライアン・ムーア騎手だ。 発馬機の中で左後肢が機械の側壁に挟まったまま発走となり、大きく出遅れた同馬は、14頭立ての10着でゴールした。

レース終了後、英国の競馬規則に基づいて審議が行われ、裁決委員は、ほかの馬と同じ条件で公正なスタートを切る機会を奪われ、勝つ見込みに大きな影響があったと判断。結果として、入線していたにもかかわらず、ベンヴェヌートチェッリーニに関わる馬券はすべて返還の対象となった。優勝したのはクリスマスデー(騎乗ロナン・ウィーラン騎手、調教師エイダン・オブライエン)だった。

日本のファンにとって、英ダービーの一件は遠い出来事とは限らない。JRAは農林水産大臣の認可に基づき、英ダービーを含む海外の主要32競走を対象に、日本国内で馬券を発売している。ノンランナーなどが発生した際の馬券の扱いについては、レース主催国のルールに準じると公表されている。

2026年6月15日の関西定例記者会見では、審判担当の松窪隆一理事が、仮にJRAが英ダービーの馬券を発売していた場合、主催国の規定に準じた対応になると説明。あわせて、パリ協約に明記されたルールであるとしたうえで、今後は制度の研究を進める中で、日本への導入の是非を検討したいと述べた。