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【クイーンS回顧】ココナッツブラウンが示した成長 自信に満ちたレースぶりで重賞初制覇

2026/08/03 10:40
勝木淳
2026年クイーンS、レース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

昨年とはまるで違う競馬でV

札幌開幕2週目のメイン・クイーンステークスはココナッツブラウンが制し、重賞初制覇。2着コガネノソラ、3着ヴーレヴーで決着した。昨年2着馬が見事に1年間で成長したことを証明した。

昨年はオープン昇級初戦での出走だったせいか、内を立ち回り、直線で進路を失いながらも、ゴール前で猛然と伸びて2着に滑り込んだ。挑戦者としての競馬だった。

その後、札幌記念2着、エリザベス女王杯5着とハイレベルな戦いで経験を積み、年明けの小倉牝馬Sが3着。ここはトップハンデタイ55.5kgの影響もあった。さらにヴィクトリアマイルに駒を進め、5着。トップクラスのマイラーたちの胸を借りた。そして、クイーンS。こうした1年間の積み重ねが見事に表現されたレースだった。

レースを引っ張ったのは、予想通りエリカエクスプレス。武豊騎手は、本馬に騎乗する際は距離を意識した組み立てを試みる。少し長ければスローに落とし、適距離と踏めば強気に出て、上がり勝負に持ち込ませない。

前半1000m通過59.2はやや強気の平均ペースで、2番手に横山典弘騎手のヴーレヴーがつけたこともあり、ベテランのペースコントロールに後続も手を焼いた。それを打開すべく動いたのが、勝ったココナッツブラウンだった。

昨年は距離ロスを消すことを意識した組み立てだったが、今年はいつでも動けるように外につけ、勝負所もいち早く外から攻めあがった。残り800m11.9-11.6-11.7-11.7のロングスパート戦に持ち込み、差し切った。

終始外を回り、積極的に仕掛け、逃げ・番手を取り逃がさない。自信に満ちたレース振りこそが成長の証。昨年とはまるで違う。元々、札幌に滞在するとテンションが上がらないという利点があり、適度に速くならない馬場も合う。札幌巧者が本領を発揮した。


下河辺牧場、格別の勝利

馬主の下河辺隆行氏、生産者の下河辺牧場にとって、この勝利は格別だろう。3代母フィラストリートは下河辺牧場が導入した繁殖牝馬で、姉はヒシアケボノ、アグネスワールドを産んだミステリーズ。スプリントチャンピオンを送る血は魅力的だった。

実際、フィラストリートはローズSを制したブロードストリートを出し、ココナッツブラウンの母ルアーズストリートもJRAで3勝をあげた。母が短距離中心だったせいかディープインパクト、ハーツクライ、オルフェーヴルと距離を意識した配合が続き、父にキタサンブラックを迎えて誕生したのがココナッツブラウンだった。

下河辺牧場の屋台骨を背負う牝系から出た重賞ウイナー。この先は昨年と同じく札幌記念に進むだろうか。着実に力をつけており、連勝があってもおかしくないだろう。


充実期にあるコガネノソラ

2着コガネノソラは中団の後ろ寄りを追走。タイミングを見て動こうとしたところ、先にココナッツブラウンに動かれてしまい、後手に回る形になったのが響いた。

勝ち馬と比べると、反応が速い方ではない。いかにも父ゴールドシップといったタイプで、多少ズブいが、エンジンがかかると簡単には止まらない。機動力と早めの加速を問う流れになったことで、その特性を活かしきれなかった。それでも、最後は差を詰めて3/4馬身差。本馬もいま、充実期にある。

3着ヴーレヴーは武豊騎手とエリカエクスプレスの逃げを利用するかのようなレース振りが光った。一時期スランプに陥っていたが、本来の行きっぷりが戻り、復活してきた。前走で巴賞を勝っているものの、本質はマイルぐらいがよさそう。今なら距離短縮でも前につけられるのではないか。

2番人気4着エリカエクスプレスには、人気を背負った逃げ馬の宿命を感じる。ヴーレヴーら先行勢にマークされ、勝ち馬の目標にもなった。もう少しじっくり仕掛けてほしいところだが、やはり人気を背負っている以上、早めに来られてしまう。今後も人気を落とす要素は少なく、厳しい立場での競馬が続きそうだ。


2026年クイーンS、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 芦毛の怪物たち』(ガイドワークス)に寄稿。

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