【富士S回顧】青葉賞馬がマイルGⅡ制覇 シュガークンが覆した“常識”
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【富士S回顧】青葉賞馬がマイルGⅡ制覇 シュガークンが覆した“常識”

2026/10/19 10:55
勝木淳
2026年富士S、レース結果,ⒸSPAIA

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序盤600mは33.5

マイルチャンピオンシップの前哨戦である富士ステークスはシュガークンが制し、重賞2勝目。2着アンパドゥ、3着エコロアルバで決着した。

ベストマイラーを決める戦いへ続くGⅡ戦で、シュガークンが輝きを取り戻すとは驚いた。3歳時は東京芝2400mの青葉賞を制し、ダービー7着。兄キタサンブラックと同じく正統派の中長距離タイプであり、富士Sに出走すること自体が意外だった。

とはいえ、陣営の選択は見事に復活勝利をたぐり寄せた。新馬戦(2着)以来のマイル戦でGⅡを勝つ青葉賞馬、なんてプロフィールはもう出現しないかもしれない。常識は非常識、固定観念こそが現状打破の障壁。道をつなげ、未来をつくる者のあるべき姿をみたような感覚だ。

レースは中距離を先行して粘るシュガークンのスタミナを最大限発揮できるような展開になった。裏を返せば、ある程度溜めをつくりながら末脚にかけるマイラーには不向き。脚を溜めにくいレース構造だった。

先手を奪ったのは外枠のエンペラーズソードだったが、内にいたシンフォーエバーがラチ沿いから主張し、引かない構えをみせる。

シンフォーエバーは近走こそ好位や中団からレースを進めていたが、昨年の中京記念では先手をとり、2着に粘った実績がある。やはり自分のスタイルで。そんな意図があったとみる。今回は引かなかった。

内ラチ沿いをとられたエンペラーズソードとしては、シンフォーエバーをパスして内に入りたいところだったが、なかなか引いてくれない。それどころかペースを上げて、今度は先手を主張してきた。これが序盤600m33.5の正体だ。


屈腱炎を克服したシュガークンの進化

12.2-10.4-10.9のレースラップはスプリント戦レベル。東京芝1600mの重賞で600m33.5以下を記録したのは、今回を除くと4例しかない。

・2009年安田記念(33.4/ウオッカ)
・2010年NHKマイルC(33.4/ダノンシャンティ)
・2011年ヴィクトリアマイル(33.5/アパパネ)
・2025年NHKマイルC(33.4/パンジャタワー)

勝ち馬はすべて差し馬。先行勢はまず残せない。また、これらはいずれもGⅠで、前哨戦での記録はない。

前半800m44.9は思わず計算をやり直したくなるレベルで、滅多に記録されない。こうなると後半は失速やむなし。後半800mは47.3で、前半より2秒4も遅かった。

前の2頭が後ろを大きく離したので、3番手以降のペースは超ハイペースとは呼べない。しかし、3番手のエコロアルバが残り600m標識手前から徐々に動いてその差を詰めにいき、レースを動かしたことで消耗戦へ流れ込んでいった。

瞬発力で決着をつけにくいレース構造だったことも、シュガークンにはプラスに働いた。新馬戦以来のマイル戦で、この距離特有の速い流れの経験はないに等しい。おそらくはマイルを走った記憶すらなかったのではないか。

ダービー後に屈腱炎で約2年間も休養しており、よく競馬場に戻ってきた。おまけにマイルで重賞2勝目。キタサンブラックの弟だけあって“もっている”。前半から中盤はマイル戦特有のラップを落とさない流れに戸惑っていたが、それがかえって自分の強みを引き出す形になった。

兄キタサンブラックのように、一定のスピードでどこまでも走っていけるのが長所。加えて、最後の直線ではマイラーたちが末脚を発揮できない消耗戦になったことで、中距離で培った体力が勝負を決めた。適性距離は中距離だが、慣れてくればマイルでも自力でレースを動かせるようになるのではないか。

長期休養明けを2度使われ、上昇気配にあったのも大きい。馬体重はダービーから28kg増え、532kgになった。キタサンブラックが完成の域に達したのは、530kgを超えた4歳秋。シュガークンもここからが勝負だ。


ハイペースでも崩れなかったアンパドゥ

2着アンパドゥは不良馬場の関屋記念に続き、タフな競馬を経験した。

その関屋記念はラスト600m11.4-11.5-11.4と瞬発力を試される流れ。今回は少し自身の強みを出しにくい展開となったが、それでも最後まで伸びようとして2着。得意パターンではない展開でも崩れなかった。まさに充実期といっていい。力関係的にも、いよいよGⅠがみえてきた。

3着エコロアルバは残り400mで先頭に立ち、レースを引っ張った。目標にされたものの、積極策で4着には1馬身差をつけており、進化を感じる。

どちらかというと後ろで溜める競馬が得意という認識だったが、今回の一戦はそこから脱却するきっかけになったのではないか。引き続き、流れをつくる側でレースを進められれば、3勝目は近い。

1番人気トロヴァトーレはスタートの遅れが痛恨で、おまけに流れも向かなかった。マイルでしっかり脚を溜められないと弾けない。

6着アドマイヤズームも前半はゆったり入って早めに動いて押し切る形がベストであり、今回は体力を温存できなかった。流れ不向きで次走見直しだろう。


2026年富士Sレース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 芦毛の怪物たち』(ガイドワークス)に寄稿。

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