【菊花賞】クビ差を分けた武豊騎手の手腕、ワールドプレミアが初戴冠 2019年をプレイバック

ⒸSPAIA
皐月賞馬、ダービー馬が不在の2019年
今週は菊花賞が開催される。過去にはスーパークリークやレオダーバン、オウケンブルースリらが制したレース。今回は2019年の一戦をピックアップして当時を振り返っていく。
菊花賞といえば、春のクラシック組vs夏の上がり馬の構図で語られることが多い。2019年は皐月賞馬サートゥルナーリア、ダービー馬ロジャーバローズがともに不在で、その構図がより鮮明になっていた。勝ちきれなかった春の実績馬か、夏に力をつけた新興勢力か──。ファンの注目が集まった。
そうした中で1番人気に推されたのは、ジャスタウェイ産駒のヴェロックス。皐月賞2着、ダービー3着の実績はメンバー屈指であり、秋初戦の神戸新聞杯でもサートゥルナーリアの2着と上々のスタートだった。川田将雅騎手とのコンビでは崩れ知らずで、その安定感も買われていた。
2番人気にもダービー5着のニシノデイジーと、春の実績馬が続いたが、3番人気~6番人気はクラシック未出走組が占める。その筆頭が良血馬ワールドプレミア。全兄ワールドエースは皐月賞2着に入り、ダービーでは1番人気に推されるほどの素質馬だった。
ワールドプレミアは若葉Sでヴェロックスの2着に入ったが、予定していた青葉賞をソエで回避して春は休養。復帰戦の神戸新聞杯では再びヴェロックスに先着されたものの、3着に入って菊花賞への優先出走権を確保した。鞍上は菊花賞の史上最年少制覇記録を持つ武豊騎手。その手綱捌きにも期待が集まった。
その他にも、春クラシック大敗からセントライト記念2着と巻き返したサトノルークス、条件戦を連勝して臨むヒシゲッコウやホウオウサーベル、馬体重340キロの超軽量牝馬メロディーレーンなど、多彩な顔ぶれがそろっていた。
内で溜めた末脚が光る
ややバラついたスタート。メイショウテンゲン、シフルマンらが少し遅れる。ディバインフォースは、鞍上の横山典弘騎手におさえられ、最後方までポジションを下げていく。一方、先行争いでは、好スタートのユニコーンライオン、ヴァンケドミンゴの外からカウディーリョが上がっていく。鞍上はM.デムーロ騎手。
出遅れたメイショウテンゲンが外からポジションを上げ、1周目のスタンド前ではナイママも同馬を外から交わすなど、なかなか隊列は決まらない。それらの内側にはヴェロックス、その真後ろにワールドプレミアが好位で脚を溜める。ニシノデイジーは後方12番手付近を追走する。
1コーナーでようやく隊列が落ち着く。カウディーリョが後続を少し引き離すが、他馬は動かない。前半の激しい位置取り争いから一転して、向正面半ばまでは各馬のにらみ合いが続く。
3コーナー手前くらいから馬群が徐々に凝縮する。最初に仕掛けたのは、道中後方にいたタガノディアマンテと田辺裕信騎手。大外から勢いをつけると、4コーナーでは2番手集団に並びかけ、観客の視線を集める。その後ろをサトノルークス、ディバインフォースが追うように進出し、馬群の内ではヴェロックス、ワールドプレミアも加速している。
直線序盤では、逃げ粘るカウディーリョを先行集団が横に広がって追いかける。内目の好位で運んでいたヴェロックスとワールドプレミアの手応えが良く、2頭がカウディーリョを追い詰めていく。後方ではメロディーレーンも脚色良く追い上げてくるが、前との差はまだ大きい。
ラスト200m、武豊騎手の檄に応えたワールドプレミアが単独で抜け出す。大外からはディバインフォースとサトノルークスも脚を伸ばす。必死に抵抗するヴェロックスをサトノルークスが交わし、ワールドプレミアに襲いかかる。
大接戦は、ワールドプレミアがクビ差しのいだところで決着。重賞初制覇をGⅠの大舞台で飾った。道中は内で脚を溜めさせ、直線で鋭い伸びを引き出した武豊騎手の手腕も光った一戦だった。
2着はサトノルークス、3着はヴェロックスだった。4、5着には人気薄が激走。16番人気のディバインフォースが横山典弘騎手に導かれて4着に入り、12番人気のメロディーレーンも上がり最速タイの末脚で5着に食い込んだ。2番人気のニシノデイジーは9着に敗れた。
8番人気のサトノルークスが2着に入ったため、馬連は4,680円の好配当となった。もし3着ヴェロックス(1番人気)と4着ディバインフォース(16番人気)が入れ替わっていたら、3連単はかなりの高額配当になっていただろう。だが、ここは春のクラシックで好走を続けてきたヴェロックスの意地が優った。
ワールドプレミア産駒ロブチェンが三冠馬となるか
鞍上の武豊騎手は当時50歳で、菊花賞の史上最年長制覇の記録を更新。最年少制覇と最年長制覇を同時に保持することとなった。さらに昭和、平成、令和と3つの時代を跨ぎ、菊花賞最多となる5勝目を挙げる大偉業でもあった。
また、菊花賞2着サトノルークスの鞍上だった福永祐一騎手は、翌年にコントレイルで菊花賞を制覇。史上8頭目の三冠馬誕生の瞬間を迎えた。
以降は皐月賞、ダービーの二冠馬が現れていなかったが、今年、ロブチェンが9頭目の三冠馬になるべく参戦する。父はワールドプレミア。父が出走できなかった皐月賞、ダービーを勝ち、父が栄冠をつかんだ菊花賞の舞台へ向かう。
一方、父ワールドプレミアを菊花賞馬に導いた武豊騎手は、コントレイル産駒のゴーイントゥスカイで三冠阻止に挑む。果たして今年の菊花賞には、どのような結末が待っているのだろうか──。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はメジロマックイーン、レオダーバン、オルフェーヴル、ゴールドシップ。
《関連記事》
・【菊花賞】特別登録馬一覧
・【菊花賞】好走ゼロ「神戸新聞杯で上がり4位以下」に該当 三冠かかるロブチェンの取捨は
・武豊騎手は重賞で複回128% 現役最高の京都巧者を種牡馬、騎手ごとに徹底検証