【キーンランドC回顧】GⅠ馬が支配した展開を巧みに利用 充実期迎えたサウンドモリアーナが秋へ弾み

ⒸSPAIA
ウインカーネリアンが演出したほどよい流れ
サマースプリントシリーズ第5戦キーンランドCはサウンドモリアーナが制し、重賞初制覇。2着パンジャタワー、3着ウインカーネリアンで決着した。
スプリンターズSがいよいよ迫ってきた。GⅠ馬2頭の登場によって一気に秋を感じるレースになった。そして、GⅠ馬の存在がレース内容、展開に与えた影響は大きく、その存在感の大きさを痛感した。
先手は昨年のスプリンターズS覇者ウインカーネリアン。ダッシュよく先手を主張すると、そこに執拗に絡んでくるライバルはいなかった。それはそうだろう。GⅠ馬に競りかければ潰されかねない。せっかくの重賞で自滅する道は選ばない。
だが、利用する手はある。それを実行したのが勝ったサウンドモリアーナだった。ウインカーネリアンを射程圏に入れ、そのペースと仕掛けを見計らって抜け出す。鞍上の武豊騎手は昨年のスプリンターズSではジューンブレアで逃げ、番手のウインカーネリアンに狙われる形になった。騎乗馬こそ違うが、ちょうど入れ替わる形になった。
GⅠ馬の逃げに名手の番手とくれば、隊列はこれ以上騒がしくならない。前半600m34.0はウインカーネリアンにとってちょっと遅いぐらい。始動戦としてはほどよいペースだった。休み明けからいきなりオーバーペースになってしまえば、本番に影響が出る。そこまで計算した上でのちょうどいい流れだった。
この2頭から一歩下がったインにパンジャタワーがつけ、この時点で勝負は前。後ろからの逆転は難しくなった。
サウンドモリアーナに流れるスピードと底力の血
後半600mは11.2-11.1-11.4、33.7。さすがにこの隊列で遅い流れになれば、後半は速い。コーナー部分を11.2-11.1で回ってこられるのはウインカーネリアンの強み。機動力がまるで違う。こうも速いラップで先頭にコーナーを通過されれば、後ろはたまったものではなく、当然、外を回ればアウト。ついてこられる馬は限られた。
勝ったサウンドモリアーナは番手につけた優位性を最大限に活かし、ウインカーネリアンをとらえた。コーナーでは少し外に膨らんでいたが、かえってスムーズに馬場状態のいい外目に自然に持ち出すことができた。なにせ相手はGⅠ馬であり、手応え、末脚できっちり上回ったのは価値がある。
北九州記念は道悪で力を出せなかったが、良馬場ですんなり先行だとしぶとい。昨夏の札幌をきっかけに安定感が増し、今年の春はそこに勝ち切るだけの体力もついてきた。いよいよスプリンターとしての充実期を迎えており、秋のGⅠも期待していい。
母サウンドリアーナはファンタジーSを勝ち、桜花賞に駒を進めながら、ダートに転じて端午S勝ち、ユニコーンS2着と結果を残した。適性の幅が広いオールラウンダーだったが、その後の長期休養の影響もあり、古馬になってから結果を出せなかった。
ケイムホーム産駒であり、戦歴としては早熟型だが、ケガの影響によるところが大きかったのではないか。母の父ダンシングブレーヴから豊かな成長力を譲り受けていたはずで、サウンドモリアーナにはその血の力も感じる。父ミッキーアイルのスピードと母系に流れるダンシングブレーヴの血の融合はまだまだ上がありそうな気がしてならない。
上々の始動戦だった2、3着馬
2着パンジャタワーは先行する2頭を狙う絶好位につけたが、スタートがやや遅く、前半で少し先に脚を使った影響もあったのではないか。サウンドモリアーナを追う脚はやや鈍かった。とはいえ、この馬もここは始動戦であり、目標は先。完調手前だった状態を踏まえれば、評価は決して落ちない。むしろ無難に秋へのスタートを切れたとみていい。
一方でレース上がり600m33.7はパンジャタワーには速すぎた。快勝した昨年のレース上がり600mは34.6であり、このぐらいの流れを差す形がベストだろう。
3着ウインカーネリアンは59キロを背負っての逃げであり、最後に差されたのは致し方ない面がある。決して力負けではない。もう少し速い流れを演出し、後続に脚を使わせる形がよく、本番ではそういった競馬を展開するのではないか。休み明けのここは無理せず、無難にクリアするのが目標であり、そのミッションはクリアできた。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 芦毛の怪物たち』(ガイドワークス)に寄稿。
《関連記事》
・【キーンランドC】結果/払戻
・【キーンランドC予想印まとめ】本命は三者三様 GⅠ馬2頭にロジケープが割って入る
・【キーンランドC】AIの本命は4連勝狙うロジケープ 「前走Vの3歳」は複勝率50%