【スプリンターズS回顧】スピードの制御と急坂を克服した成長力 ピューロマジックが三度目の正直でつかんだ栄冠

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時計がかかってもイン優位の特殊馬場
秋のGⅠ開幕戦スプリンターズSはピューロマジックが逃げ切り、GⅠ初制覇。2着ワールズエンド、3着サウンドモリアーナで決着した。
枠順が発表され、快速型と人気馬が外枠に固まった一戦は中山の特殊な馬場状態も相まって、非常に難解だった。中山の芝は雨の影響を受け続け、たしかに見た目は悪化して見えるも、実際、レースを見ていくと内枠優勢。インをとりにいった先行型が強い状況が最終週まで続いた。
時計がかかっても、外伸びが効かないという特殊馬場は我々の常識を破壊していった。この感覚をいち早くつかんだ人が今開催の中山芝を攻略できたといっていい。
その状況で外に人気馬と先行型が固まったとなると、なおさら頭を悩ませる。その結末は大外枠に入ったピューロマジックの逃げ切り。冷静に考えれば、サマースプリントシリーズチャンピオンが9番人気というのは、馬券を買う側の分析に狂いが生じていたように思える。
この計算違いはなぜ起きたのか。まず前走セントウルSでは前半600m32.8で飛ばし、フリッカージャブに差された。以前のピューロマジックはどちらかというと飛ばすだけ飛ばしてどこまで粘れるか。そんなスピード一辺倒の競馬スタイルだった。
村田牧場の血をつなぐ努力が結実
スプリンターズSでは過去2年続けて出走し、いずれも8着。2年前は前半600m32.1で飛ばし、最後は止まった。
これが翌年のアイビスSDで差す形で勝利を収めるなど、経験を積んでいくことで我慢することを覚えていった。今年、函館SS、アイビスSDを連勝できたのは、スピードの制御を自らできるようになったからだった。
前走セントウルSは間隔を詰めて使ったことで以前の前進気勢が表面化したようにも見えた。おまけにこの3カ月で4戦目と、今回は使われた消耗も気になった。実際、ちょっと陣営のトーンは上がらず、セーブ気味の調整に不安を感じる声もあった。
そして、セントウルSでフリッカージャブに差されたことで、急坂への不安もあった。実際、ピューロマジックが勝利を挙げたのは札幌、函館、新潟、京都、小倉と平坦コースばかりだった。
だが、ピューロマジックは経験を積んで競馬を覚え、成長していく力を備えていた。スピードの制御を乗り越え、ついに急坂まで克服した。
この成長力と奥深さは村田牧場が長年にわたりつないできた牝系の力だったのではないか。この牝系は村田牧場が1990年代にアメリカから輸入したカスパースカイゴールドを祖とし、約30年間、つないできた。
2015年ファンタジーSで2着に粘ったメジェルダはカスパースカイゴールドのひ孫にあたる。メジェルダは父アジアエクスプレスのメディーヴァルを送り、そのメディーヴァルの牧場時代の馬体の良さが同配合の全きょうだいにつながり、ピューロマジックが誕生した。
村田牧場生産馬のJRA・GⅠ制覇は2009年スプリンターズS以来。その勝ち馬ローレルゲレイロは牧場ゆかりのモガミヒメの牝系だった。
牧場が血をつなぐのは決して平坦な道のりではない。成功もあれば挫折もある。それでもつなでいくから未来がある。ピューロマジックの苦手を克服してく成長力もスピードも粘り腰も村田牧場の血をつなぐ努力の結実だった。
収穫が目立った4着スターアニス
2着ワールズエンドは初の1200m戦出走だったが、難なくインの3番手をとれた。こちらもスピードの成長を感じる。
同時にこの日の中山の絶好位であるイン3を確保できたのも好走のあと押しにつながった。4コーナーで外に見向きもせず、徹底してインから抜け出したことで2着争いをハナ差制したとみる。馬場を知り尽くした津村明秀騎手の戦略も冴えた。
3着サウンドモリアーナはキーンランドCでパンジャタワー、ウインカーネリアンに先着しており、11番人気は盲点だった。4コーナーで内にワールズエンドがおり、1頭分、外に持ち出さざるを得ず、そこで少しだけスムーズさを欠いた。
ワールズエンドとの差はほぼないに等しい。どんなペースでも馬場でも流れに乗れるようになっており、確実に力をつけている。
4着スターアニスは上がり2位の末脚でよく伸びてはきたが、展開と馬場に泣かされた印象で、スプリント戦への対応は問題なかった。GⅠで1分9秒台まで時計を要するタフな状況でここまで走れたのも収穫だったのではないか。
フリッカージャブは12着。序盤のレースの入りはセントウルSの再現かのようで、序盤は完璧だったはずだが、早々に手応えがなくなった。連戦の疲れがあったのではないか。
パンジャタワーは15着。負けパターンの大外を通ったとはいえ、ちょっと負けすぎで、なにかアクシデントが発生していないことを願う。ゲート入りを嫌がるなど精神面の課題もありそうだ。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 芦毛の怪物たち』(ガイドワークス)に寄稿。
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