【ファンタジーS】新種牡馬ジャンダルムに初の重賞タイトル ニクスルーナがスローの瞬発力勝負を制す

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距離延長を意識した函館2歳S組
阪神ジュベナイルフィリーズの前哨戦・ファンタジーステークスはニクスルーナが制し、重賞初制覇。2着フェリチタ、3着バタフライで決着した。
マイルの王道は前週のアルテミスSで、どちらかというと1400m以下のスプリント色が濃い組み合わせになるのがファンタジーS。今年も出走馬の顔ぶれはそんな雰囲気があった。
好素材の呼び声が高いブライトスクリプトが1番人気に推されたが、レースの核を担うのは函館2歳Sの1、2着馬フェリチタとイモージェンだった。
今年の函館2歳Sは前後半600m34.2-36.2と、速い流れからの持久力勝負に持ち込まれた。フェリチタもイモージェンも好位から抜け出しており、2頭の出方がファンタジーSの流れを決める。結果として、フェリチタが2番手、イモージェンは5番手。やはり先を考え、距離延長に対応する道を探った。
対して、ハナを奪ったのはバタフライ。ロケットスタートで隊列を一瞬で決めた。フェリチタはこの動きを利用する形で2番手に構え、距離延長に対応していく。
前半600mは35.6と遅く、400~1000mの11.9-11.8-11.7は1400m戦としてはかなりゆったりだった。当然、ラストは瞬発力勝負になり、残り400mは11.0-11.2。先に抜け出したフェリチタが勝負を決めにいった。この上がりを2歳牝馬が差し切るのは、ほぼ不可能に近い。
ハーツクライの影響を感じるニクスルーナ
勝ったニクスルーナは緩い流れを3列目から差し切った。道中は折り合いをつけるべく馬群で我慢し、3~4コーナーはインコース狙い。外に出そうという場面もあったが、それをせずインにこだわったことで、差し切るだけの脚が稼げた。外を回っていたら厳しかったはずで、流れと勝ち筋を冷静に読んだ岩田望来騎手のヘッドワークが光った。
緩い流れであり、前もバテず、差し馬勢も手応えたっぷり。進路がない不安もあった。それでも待てる胆力も勝利に結びついた。直線では前2頭の間にスペースはなかったが、切り替えて、その外へ。計算しつくされたほどに見事な競馬だった。
ニクスルーナの祖母ピラミマといえば、スワーヴリチャードの母。ピラミマの産駒はデビューした10頭中8頭が勝利を挙げた。
GⅠ2勝を含む6勝を挙げたスワーヴリチャードだけでなく、ナンヨーカノン、バンドワゴン、エマノンが4勝。さらにルナステラ、ルナシオン、バロッサヴァレーが3勝と非常に優秀な血だ。
ハーツクライ産駒はスワーヴリチャードのほかに姉のエマノン、妹のバロッサヴァレー、そしてルナベイルの4頭。このうち唯一未勝利で終わったのが、ニクスルーナの母ルナベイルだった。
ルナベイルが競馬場で走ったのはたった1度だけ。藤沢和雄厩舎に所属し、C.ルメール騎手が騎乗した中山芝2000mの新馬戦で2着。最初で最後のレースだった。大成しなかったが、ポテンシャルの高さは証明していた。
ノーザンファームで繁殖入りした後、2番目に産んだのがニクスルーナ。レースぶりや瞬発力への対応には母の父ハーツクライの影響を感じる。ピラミマとの相性抜群だったハーツクライが孫の代でもスパイスになっている。
当然、距離は1400mでも短いぐらい。間違いなくマイル以上だろう。スローのファンタジーSを差し切ったのはその証明であり、例年のファンタジーSとはひと味違う競馬だった。阪神JFにつながる可能性は高く、データ上の相性の悪さから人気を落とすようならおもしろいのではないか。
父ジャンダルムは今年の新種牡馬。新種牡馬産駒の重賞勝利は、サウジアラビアロイヤルカップを制したエフフォーリア産駒のアゴルディーノに続く2例目となった。
ジャンダルムといえばサンデーサイレンス×ダンジグの名スプリンター・ビリーヴの産駒。生粋のスプリンターだが、血の奥深さもあった。わずか2世代しか残せず、早世したのが悔やまれてならない。アロースタッドの看板になる可能性すらあった。
2着フェリチタは、2番手から一旦先頭の場面をつくり、見せ場をつくった。距離延長への計算はある程度立った。
ただ、残り200mは少し伸びを欠いており、さらなる距離延長、マイルとなると微妙なラインだろう。
3着バタフライは最低人気評価に反発するかのように粘り腰をみせた。なによりスタートで機先を制したことがすべて。今後もこれほど速くゲートを切られるなら、楽しみはある。
一方で、スローの逃げ残りであり、同じ展開に持ち込めるかどうかという再現性の問題は残る。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 芦毛の怪物たち』(ガイドワークス)に寄稿。
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